無題
恋とか、愛とかそんな確証のないモノを、どうして人は追い求めるんだろう。
そんなモノが無くても生きていけるし、愛が無くなって躰は繋げる。
食べるため
生きるため
復讐のため
呼吸さえ出来れば生きてる証拠、躰が不自由なく動けば問題ない世界
そんな世界の中で生きる知恵を学び、笑顔という仮面を付けて
剥がれないように何度も工夫した。
人は裏切るものだ。
笑顔で覆い隠して、本心を見せなければ、騙された時、裏切られた時
どんな時でも軽傷で済む。
心の奥まで傷は達してこない。
この笑顔は、人を包むためのモノじゃなくて、自分を守るためのモノなんだ。
(ほんとにそう?)
暗くて底が無くて、ただ上ばかりの光り一筋に手を伸ばす毎日。
ただ目標のために、何も考えず、自分のために。
でもそんな世界で、自分の隣にもう一つ世界が広がっているとしたら?
ふと横を見た瞬間、隣に扉があったとしたら?
そしてその扉が、理由は違えど同じ光りを目指す人間がいるとしたら?
しかも、その人間がドアをぶち破ってこっちまできたとしたら…?
余裕ある振りして、笑顔で遠ざけて。
それでもまだまだ俺の世界に居座る相手に、俺はどうしたらいい?
怒鳴って追い出せばいいのか、それとも無関心を装えばいいのか。
どちらにせよ、もう俺には遅すぎて。
笑顔の仮面とフリの言葉を、本心と思いこんだ相手方は
警戒心なんて皆無で俺のことを信じ込んで、心を開いて。
それが逆に、俺の心の堀を埋めていく。
信じるって何だ?
信じられるって、何?
レプリカみたいな言葉がだんだん現実味を帯びて
気が付けばそばにいるのが当たり前で。
面倒だ まったくもって、でもそれが嫌じゃない自分がいる。
「ロックオンの事が、好きです」
そうやって、真剣な顔をして。
俺の心の一番柔らかい部分にナイフを突きつけるんだ。
そして気付く、いつのまにか外堀は愚か、本丸だって包囲されていたって事。
逃げ場はない。
ただ俺が唯一いける処は、本丸から飛び降りるくらいのことしか出来なくて
そかもそれはもれなく 相手にキャッチされるにきまってる。
だから俺は、ナイフを突きつけられても、何もしないし、何も言わない。
「あなたの本心が聞きたい」
躰ならいくらだってやるし、言葉が無くても想いはあるのに
どうして言葉をもとめる?
何故俺の口から言わせたがる。
聞きたがる?
何処までも続きそうな無言の時の中を、泳いで逃げていきたい。
「ロックオン…」
そんな目で見るなよ。
俺は、何も悪くない。
何も言ってないんだから、誰も傷つけない
(ほんとうに?)
だって、今更言えるか?
躰だって許して、大概のことは受け入れてるこの俺が
たった一言、言葉を口にするのが例えようもなく恥ずかしいとか。
馬鹿馬鹿しくて、絶対言えない。
言わなくたって、どうせ、わかってんだろーけど。
「耳まで赤いですよ」
「だったら聞くなよ!」
何も言わない変わりに、俺はぎゅっと相手の手を握った。
もちろん、何も言わずに、真っ赤な顔を隠すように顔を背けて。
どーせ、お見通しなんだろうけど。
「可愛い」
「……うるせ」
好きだ 好きです 好きだよ 好きなんです 好き…
んな恥ずかしい言葉、絶対に言ってたまるか!