刹那はどうだか知らないけど
俺は、同情とか哀れみとか、そんなんでこんな関係になったんじゃない。



倒錯的願望








事後の倦怠感に抗うことが出来ず、シーツに沈むようにしてまだ浅い呼吸を繰り返す。
人との接触を嫌う刹那は、行為が終わるとすぐに俺から離れて自室へと帰っていった。
別に事後の甘い会話がしたいとか、そう言うんじゃない。
元々俺たちはそう言う甘い関係ではなく、生々しい言い方では"性欲処理"の為に寝ているようなものだ。
お互い気持ちが良くて、後腐れもない・・・はず。
ただ少し違うのは、刹那がそれを愛情と勘違いしていることだった。
正しくは・・・、勘違いし始めている?

投げ出した腕を引き寄せ、申し訳程度に素肌にかかっていたシーツを引き上げる。
先程まで相手がいた場所はもう冷え始めていて、それが毎度毎度当たり前のようになって、ここ最近はもう慣れた。
汗の引かない躰をもてあましながら、ぼんやりと先程の行為を反芻する。
熱と若さに任せた行為。(24歳が16歳に押し倒される図など、間抜けすぎて笑えない。)
刹那は、行為中に俺のことを「好き」だと言う。
まるで儀式のように、毎回毎回、何度も何度も。
言われ始めた当初は、正直戸惑った。戦闘後の熱を処理しきれない刹那を宥めるために始めた行為だったから。
プレッシャーを感じていたかどうかは今になってはわからないが、世界を変えるという目的の元に行われる武力介入に
首謀者として関わることの責任や不安感は、16歳という少年が背負うには重すぎたのかもしれない。
あまり話すタイプではなく、心の内を打ち明けるタイプでもない刹那は、きっとずっと、そんな気持を溜めていたのだろう。
上に乗り上げてきた刹那はどこかせっぱ詰まっていて、拒絶すれば相手が傷つくことは明らかだった。
そんな刹那を、拒みきれずに 腕の中に抱いた。
俺はと言えば、刹那のためにしてやれることはしてやりたかったし、今までに生きるために必要だった事があったから
特に男に躰を開くことに特に抵抗はなかった。でも、こんな柔らかくもない身体を抱いても、楽しくないだろうに。


何度も行為を繰り返し そして刹那は、勘違いした。
最初は何度もそれは勘違いだと言って解いた。
16歳なんてまだまだ思春期だ、倒錯的になっているに決まっている。
それでも刹那は同じ言葉を繰り返し、しまいには愛の言葉まで口にし始めた。
さすがにそこまで行くと洒落にならなかったから、「好き」という言葉は黙認することにした。

刹那は誤解していて、今口にしている「好き」だって、親愛の好きとなんら変わりないと知っている。

それでも



それでも、その言葉を聞く度に 少しずつ 嬉しい と感じている自分がいる。
好き放題抱かれて、今みたいに一人放り出されても。
毎回一つ一つ積み重なって、俺の中の何かを塗り替えていく言葉。
これ以上聞きたくないと思っていても、俺は刹那との行為をやめることは出来なくて
刹那の口から零れるこの言葉を止めることも出来ないのだ。
なんて、滑稽なのだろうか。


シーツを肩まで引き寄せ、痛む躰をゆっくりと動かして仰向けから横向きになる。
冷めてきた熱に背が竦み、まるで子供がするように躰を丸めた。
ゆっくりと先程刹那を受け入れていた場所から残滓がこぼれ落ちる。
その不快感に身震いすると同時に、耐えきれないほどの寂寥感が押し寄せてくる。






本当は、知っている。

今日だって、俺を抱いた後に刹那がどういう表情をしたのか。

刹那が、あの女性に少しずつ傾倒していっていることも。

本当は、もうこんなことはやめた方がいいこと。





彼女が恋愛対象だろうと、そうじゃなかろうと。
刹那はこんな堅い躰じゃなくて、もっと温かくて柔らかい身体を抱くべきだ。
あんな、追いつめられたような顔でいう「好き」ではなくて
もっと温かな感情であることも、知って欲しい。
俺は、自分からは 止められないから
せめて刹那が、俺を抱いた後に気付いている違和感から 読み取って欲しい。





こんな行為は、非生産的で 意味がないって。



勘違いをしているのは、俺の方だ。













「ばっかみたい・・・・だな」








呟いた言葉は掠れていて、どこか切ない響きを含んでいて
その声に 自分で 嗤った。
































・・・こういう小説の方が素晴らしく書きやすいんですが!(ぁ
あれです、8話でマリナ?に刹那が会って〜とかの捏造です(笑)