大人なんて薄汚いものだ。
自己の欲望のためならば、多少の倫理や良心の声など無視できる。
見たくないことも、聞きたくないことも 全部、全部なかったことにできる。
帰り路の先、落日
室内に響く肉と肉がぶつかる音と、忙しない息遣い。
打ち込まれる熱い楔が体内を抉り、引切り無しに咽喉からあられもない声が上がった。
声を抑えるという段階はもう既に通り過ぎ、ただただ年下の刹那に蹂躙されるがままだ。
今は一体何時なのだろうか。
枕元におかれた時計を見ようと試みたが、両脚を大きく広げられ正面から深く突かれると
もはやそれどころではなくなった。
覚えている限りでは、俺は2回、刹那は3回達しているはずだ。
まったくもって若さとはすばらしいことだと、この状況下で思う。
刹那は一度も、俺の中から抜いていないのだ。
俺はというと篭った熱で全身うっすらと汗をかいているし、抱えられている足など
既に力を入れたところでどうにかなる状態ではなくなっている。
それでもイイところを穿たれれば、まるで答えるように内腿が痙攣する。
熱を受け入れた先はもうどろどろに溶けて、刹那が腰を振るたびに淫猥な音が上がった。
「あァっ・・・も、やめっ」
抗議の言葉も空しく、否という代わりにさらに深く奥を穿たれ、静止のために伸ばした腕は宙を切り
耐え切れない快感に乱れたシーツを掴むしかなかった。
握ったシーツに縋る様に身をよじると、目じりに溜まっていた生理的な涙が流れ落ちた。
口の端からは飲み込めない涎が伝い、しかも涙を流す。24歳のする姿ではない。
それでも、少しでも良くなってもらおうと下腹部に力を入れる。
それを挑発ととったのか、刹那は俺の肩を掴んで寝台に押し付け、ラストスパートとばかりに激しく腰を穿った。
激しい挿入についていけるはずもなく、俺はただの喘ぐだけの存在になる。
「んぁっ・・ああぁっ・・・ひっ、あああああああ!!」
指では到底届かない深い場所を開かれたと思った瞬間、内部を焼くような熱が放出され
俺はその飛沫を受けて触られてもいないのに達し、そのまま視界が白く染まっていった。
最後にうっすら見えた刹那は、低く唸りながら熱を注いでいて、その瞳は閉じられていた。
目が覚めた。
そしたら「あぁ、やっぱな」って思いと「今回もか」という二つの思いが心を走り抜けた。
プトレマイオスでは窓というものが無いから、外の明るさで時刻を計ることはできない。
首をひねって時計を確認するとまだ起床するには早すぎる時間で。
自分に対してあまり生産性がないから、隣の温もりを確認する事はもうずいぶん前から諦めている。
体を動かそうとすると、腕一本が重く、体全体が泥の中に埋まっているかのような倦怠感。
ここのところ、刹那が二日と空けずに訪れてくることによって引き起こされている現象だ。
しかも相手は
「・・・また放っていきやがった・・・・・・」
下肢に残るまだ相手を受け入れているような違和感と、濡れた感覚。
始めにゴムを付けずにやらせたのがまずかったのか、刹那はゴムを付けることがない。
だから・・・必然的に、中だしだ。
散々好きなだけ出しといて、処理もせずに帰るのはどうかと思う。
や、実際に処理をするといわれたら恥ずかしくて絶対拒否するんだけど。
まぁ…、俺が処理すればいいだけの話なんだが。
気合を入れて起き上がり、ベットの淵に座ると案の定中のものがゆっくりと降りてくる。
(・・・・若さって、すごいなぁ)
後で掃除をすればいいと割り切って、立たない足腰を無理やり引きずるようにしてバスルームへ向かった。
熱い湯を頭から浴びながら、壁に手を付いてずりずりと床へひざを突く。
冷たいタイルが、躰をつたって落ちてきた湯によってじんわりと温かさを取り戻す。
先程までの熱に浮かされた状態から、熱い湯が思考を現実に引き戻していく。
漏れ溢れ足の隙間から流れていく白い残滓を眺めながら、自分のしている無生産な行為に無性に泣きたくなった。
別に女じゃないんだから、事後に甘い睦み合いがしたいわけではない。
硬くて柔らかさの無いこの体でも、耐久性がある。
女性よりも頑丈にできたこの体だ、多少ひどく扱っても壊れはしない。
それだけが今のところの救いだった。
でないと今のペースで刹那を受け入れることは不可能だろう。
先ほどまで刹那を受け入れていた場所に自ら指を入れて、注がれたものを掻き出す。
最初こそ躊躇していたが、そんな時間があるならさっさと終わらせて寝た方が良い。
それは慣れなのか、諦めなのか。境界線はどうも曖昧で確かな答えは見つかりそうにない。
粘着質なそれはごぽりと音を立て、太腿を伝って水にさらわれていく。
間違っても、受精などできない己の体。
・・・気になった、そしたら 好きになっていた。
自分より8歳も年下の、しかも男だけれど。
支えてやりたい、人並みの感情をもう一度取り戻してやりたいという気持ちから始まったこの感情は
気が付いたら俺の予期しない方向に向かい、制御不能状態だ。
初めに求めてきたのは刹那だった。正直、刹那が俺に入れたいといったときは驚いたが
今となってはどちらが入れようと関係が無いとも思う。
要は、刹那が求めるなら 俺はそれを与えてやりたい、ただそれだけだからだ。
愛など囁かなくても、温かさは分けてやれる。
少しでも安らぎを与えたやりたいと、そう思っている。
だから別に、求められることは苦ではない。
それでもやはり刹那の熱を受け入れる部分は、もともとその様に作られていないわけで。
生で入れられるだけでも結構な負担だが、中に出されるとなると相当な負荷がかかる。
できるだけすぐに今のように処理をするようにしているが、毎回気を失うほど激しくされていると
掻き出したくらいではダメージを回復することはできない。
(今日で何回目だろ・・・。さすがにきついな。)
湯がタイルにあたる音を聞きながらぼんやりと考える。
ここの所寝込むほどではないにしても、体調が芳しくない。
原因がわかっているだけに複雑だ。
受け入れておきながら刹那だけを責める訳にもいかないし、だからといって自分が拒否できるとは思えない。
「・・・・・はぁ」
シャワーの音にも負けないくらいの盛大なため息が漏れる。
今の時間なら、あと一眠りくらいできる時間帯だ。
今日も諸々の訓練とシュミレートがある。
悩むよりもまずは、体力の回復。
体内から流れ出るものがなくなったことを確認し、重い体を引きずって乱れたベッドへダイブ。
体が濡れているとか、髪を乾かしていないとか、もうそんなのはどうでもいい。
今はただ倦怠感と疲労からくる睡魔の誘惑にしたがって、ゆっくりと瞼を下ろした。
夢を見ないほど、深く、眠れればいいのに。