*宇宙空間なのに色々おかしいです、でも気にしないで読んで下さい(ぁ
  だって宇宙なんて行ったことないんだもの。そして過去捏造orz











白く続く廊下。殴られた頬がゆっくりと熱を持ちはじめ、その痛みと共にアレルヤの言葉が刹那の思考に染み渡る。
(俺が、ロックオンに甘えている?何処が。一体何をどう見ればそう思う。大体、最初に受け入れたのはロックオンの方だ。言いたいことがあるなら、直に言えばいい。嫌ならそうと言えばいい。あいつは…いつもへられらと笑って、人のことを見透かして。
その態度が、気にくわない。偽善者め。)
幼い頃から戦場にいるしかなかった刹那は、CBに来てから大分ましになったとはいえ、人を信じることに抵抗があった。今まで近寄ってきた人間は、裏切りや、自分を利用しようという輩達ばかりで、ロックオンのようなタイプは初めてだった。優しくしてくれる人はいくらでもいた、けれど彼らは"刹那のような子供を保護する"という行為に酔った、偽善者達ばかり。ロックオンのように、無償の優しさなどなかった。だから、優しさの裏には必ず人間のどろどろとした欲求があると、そう思っているのだ。

(……だから、試した。どうせ、いつか化けの皮が剥がれるだろうと思って。)



(でも、何なんだ。
倒れたって、体調不良って。朝は全然普通にしてた癖に。偽善者の、癖に…)


訳のわからない気持ちが湧き上がり、刹那は我知らず拳を握りしめた。




音を立てて開いた部屋の扉。いつもなら振り返り迎えるロックオンがいない。物音一つしない部屋を進み、ベットへ足を向けると、その中で力無く息苦しそうに眠る姿があった。自分を見ない閉じられた瞳。
その光景をみて、何故かアレルヤの「求めてばかりでは、やがて無くなってしまうよ」という言葉が聞こえた気がした。















帰り路の先、落日










夢を見ていた。何もない荒野に、一生懸命種を蒔く夢。機材が何一つ無くて、手で硬い大地を掘って、遠くに流れる川から何度も水を手で掬って持って行った。どれだけ一生懸命水をやっても、肥料をやっても、一向に芽が出なくて、道行く人に「無理だ」と何度も言われた。そんなはずはないって。これだけ世話してるのに、ちゃんと毎日見てるのに。何度も何度も、芽が出るまで種を蒔いて、水をやってを繰り返した。そしたらやっと一つだけ芽が出て、毎日それを大事に育てた。
そんなある日、成長を続けていた芽が力無く倒れていた。何故、どうしてと原因を探したけれど、自分ではわからない。途方に暮れて芽の前に座り込んでいると、誰かが背後で「根腐れだ」と言った。どこかで聞いた声だと思ったけれど、誰の声かはわからなかった。俺は素手で土を掘り返し、根元を見る。
--- 腐っていた。
気が付いたら自分の手が赤く染まっていた。土を掻きすぎて爪が剥がれ落ちていた。
一体、自分はどうしてそこまで芽を育てようとしていたのか。ただ呆然と、腐ってしまった芽を見詰めている、そんな夢。





















(冷たくて…気持ちいい)
ひんやりとした感触が額を覆う感触に、浅い眠りの淵から引き上げられる。その温度差に、意識が浮上し、それに合わせて瞼をあげた。それと同時に去っていく額の冷たさに、もっと感じていたかったな、とロックオンは残念に思った。
ぼんやりとした視界に映るのは見慣れた天井と、黒い髪。ゆっくりと視線を巡らせると、そこには刹那がなんだか気まずそうに立っていた。アレルヤが帰ってきたのかと思っていたロックオンは、夢でも見ていたのかと自分の記憶を疑った。先程までここにいたのはアレルヤのはず、氷嚢を取りに行くと言ったまま何処へ行ったんだろうか。それとも、最初からアレルヤはこの部屋にはいなかったのだろうか。熱でぼーっとした頭では、当たり前のことも良く解らない。記憶を辿ろうにも回らない頭では無理だとロックオンは諦め、今の状態だけを受け入れることにした。
「何で…刹那が…?」
無言でこちらを見詰めるその顔は、何故か殴られたような痕があり、しかもその頬は赤く腫れてきている。何故刹那にそんな傷があるのか、今日は体術訓練でもあったのだろうかと頭を巡らせる。どちらにせよ、ついさっき殴られたばかりのようで。あまりに痛々しいそれに思わず重い手を伸ばした。
「これ、…どしたんだ?」
舌がもつれ、上手く発音できない。喉を通る吐息は熱く、必要以上に声を掠らせた。腫れた頬に手を這わせる、思ったよりも熱を持っていないな、とロックオンは判断したが、それは彼の手が熱で熱かった為だ。痛む頬に触れられた刹那は、一瞬顔を歪め、そして大変不服そうに「何でもない」と応える。その返答に少しの寂しさを感じながら、ロックオンは手を下ろした。
刹那が自分のことを語りたがらないのは、今に始まったことではない。
「後でちゃんと手当、しろよ」
氷嚢でもあればそれで冷やしてやれるのだが、残念ながらそれもない。無言で頷いた刹那にほっと息をつく。しかしそれっきり二人の間に言葉はなく、それでも視線だけはしっかりと合わせられているので、なんとなく気まずい。
「エクシア…あぁ、エクシアの整備……終わったか?」
「…………あぁ。」
実際はまだ終わっていなかったのだが、それを説明するのも面倒なので肯定する刹那。一方のロックオンは、エクシアという言葉を口にしたことにより芋蔓式に記憶が思い出されていた。そう言えば、刹那はエクシアの整備だった。ここへ来たと言うことは、整備が終わってから来たと言うことになる。何か明日の行程で変更事項でもあって、それを伝えに来たのだろうか。
刹那は、普段滅多にここへは来ない。来るとしたら今思ったように連絡のためか…ロックオンの頭の中に、刹那がここへ来るもう一つの理由が浮かび上がる。
(何だ、そっかそっちか…)
ベットに肘をついて起きあがろうと力を入れると、頭がぐらりと大きく揺れた。慌てて差し出された刹那の腕に支えられ、ベットに再びダイブするのだけは免れる。痛む頭に手を当て、突いた腕に力を込めて刹那を見上げる。まだ青年と言うには幼い、大きな瞳とかち合い、不思議そうに見詰められる。
「悪い…。今日俺、こんなだから…躰使ってヤルのは無理だ。」
ロックオンの言葉に、刹那が押し黙る。それを無言の抗議ととったロックオンはにこりと笑い、刹那のベルトに手を伸ばした。かちゃかちゃと金属が音を立てる。
「けど…、口でしてやるな?」
ロックオンの発言と行動、それによって意を解した刹那は熱でふらつくロックオンの躰を思いっきり突き飛ばしていた。マットとはいえ硬い感触と、刹那の腕に胸を圧迫されたロックオンは、布団の上で激しく咳き込む。その様子を見た刹那は、己のやった事に思わず「あ…」と声を漏らした。自分がやった手前、苦しげに喉に手をあて咳き込むロックオンに手を伸ばすことも出来ず、ただその姿を眺める。
「かはっ…はっ………ん……、口じゃ、嫌ってか…」
苦しげな呼吸の合間に聞こえた言葉。
(違う。そうじゃない…)
どうして、何故。そんな言葉が刹那の頭を巡る。今日だって、アレルヤに言われなければ来なかった。でも別に自分は、そう言うことがしたくて、今ここにいる訳ではない。確かに今まで自分は、そう言う行為の時しかここへ来なかったし、それ以外に深くロックオンと関わることもなかった。来るたびに今みたいにに行為を受け入れようとするロックオンを見て…苛ついて、試して…。その結果、こうしてベットに沈んでいるというのに。それでも、こんなことになっても、まだ自分を受け入れようとするロックオン。また、アレルヤの言葉が蘇った。
(俺は、許されて…いる?)
咳き込みながらもこちらを見上げるロックオンの姿を見て、一つの答えが降りてくる。ずっと、試していた、その応え。どうせ今までの人間と同じで、"優しくしている"という行為に、優越感を抱いている偽善者だと思っていた。自分の株を上げるために、俺を利用しているのだと。だったら、俺を構うことで得る利益よりも大きな負荷をかけてやろうと思った。だから何度も何度もロックオンの躰を抱いて、痛めつけて、いつ自分から離れていくのかを見ていた。いつ、この行為を断らるのか、いつ声を荒げて自分に対して拳を振り上げるのかと。でも普通に考えたら…偽善なら、こんなに躰を痛めつける必要がない。こんな事に付き合ったとしても、ロックオンには何一つ利益が無いのだから。
これだけ無理を強いても、自分を嫌うことのない彼。いつも自分を受け入れ、なのに一度も日常生活の"挨拶しろ"、"ちゃんと飯を食え"等以外で、二人で会っている時に願いを言ったことはない。そう、自分はなにも、何一つロックオンに願いを言われたことがない。
---ロックオンが、その行為が何にせよ、常に自分に何かを与えようとしてくれているということ。
それは、十分に許されていると言うことにならないだろうか。そしてその事に何も気付かず、当たり前のように振る舞っていた自分は、アレルヤの言ったとおり…甘えていたに違いない。決して、振り払われる事のないその腕に。
「俺は…、ずっと試してた。あんたが、いつ…俺を拒むか」
「何…?」
するりと言葉が流れ初め、ロックオンがその内容に目を開く。自分が、今どんな気持でここにいるのか。今何を感じているのか。ここに来た理由を、情交をするためだとしか思わせられなくて、誤解しているロックオンに、伝えたい。
「ずっと偽善だと、そう思っていた。あんたからしたら…こんな行為に…特に利益なんて、ないのに」
心の奥に生まれた、伝えたい気持がある。疑心が取り払われた中にぽとりと落ちてきたその気持は、まだまだ扱い方がわからなくて。触れたら、壊れてしまいそうで。
「俺は…、こんな…こんなことがしたいんじゃない」
思わず突き飛ばしたロックオンの躰の熱さを思い出す。今までみたいに、試したり、傷つけたり、突き飛ばしたり…そんな事じゃなくて。もっと…何か、別の…。上手く言葉を紡げなくて、そんな自分に歯噛みする。どうしたら、ちゃんと伝わる?誰も、そんなことは教えてくれなかった。それでも言葉を選び、表すなら…きっとこの言葉になるに違いない。
「……俺…は、優しく………したいんだと、思う」
「え…」
今まで辛抱強く言いよどむ刹那の言葉を聞いていたロックオンが声を漏らす。驚いたその顔、これしきの言葉でそんな表情をさせてしまう自分が少し、情けない。今まで会話も充分になく、こうして自分からものを言うのは、もしかしたら無かったのかも知れない。優しくしたい、それが何をさしているのか。
「でも…、どうしたらいいのかわからない」
己の二つの手のひらを見詰め言葉を落とす。銃を握っていたこの手、この手で、彼に何が出来るのだろうか。
優しくしたい、けれど、どうしたら優しくできるのかわからない。言葉を選べばいいのか、それとも、動作で示せばいいのか。どうやったら"優しさ"というものを表現できるのか。初めて自分からロックオンに何かをしてやりたいと思ったのに、これでは、口だけだ。もっと自分に経験があれば、違うのだろうか。何一つ優しさを表せない自分の愚かさに、唇を噛んだ。
「……お前なぁ」
呆れたような、少し笑いを含んだ言葉に手から視線を移す。先程まで驚いた顔をしていたロックオンは、少し困ったような、そんな顔をして溜息をついていた。上半身を起こすと躰が辛いのか、ゆっくりとした動作でベットの際まで移動する。必然的に詰まった距離に腰が引けた。
「んな顔するなって、別に叱ったりしないから。」
言うなり、ロックオンは刹那の手を掴み、己の肩の後ろへゆっくりと回す。そして手を離すと、そのまま目の前の刹那の腹へと腕を回し抱きついた。まるでロックオンを腹に抱き込むかのような体制。薄い生地越しに、温かな温度が伝わってくる。刹那は今まで性行為に及ぶだけで、こういう行為をしたことが無かったため、初めての事に戸惑い導かれた両手をロックオンの背に回せずにいた。
「背中に手ぇ回して。別に…なんかしようとか、言おうとか、そんなの思わなくて良い」
「……」
「無理にしようとしなくても。……こうしてくれるだけで、いいよ」
腹に押しつけられ、熱で掠れた声がそう告げる。
今まで一度だって願いを口にしなかったロックオンの願いを、叶えてやりたいと思った。
言われるままに、手を回す。今までになく近づいたお互いの距離に、トクトクと響く音。
初めて感じる、ロックオンの心音。
「……あたたかい」
ただ抱きしめる、それだけで伝わるというのなら。






















「確かに刹那は中にいるけど、今はいるのはどうかと…」
「五月蠅い」


いつまで経っても帰ってこない刹那にしびれを切らし、ぶち切れたティエリアがロックオンの部屋の扉のボタンを押し。氷嚢を持ってきたアレルヤは、事情を知っているだけにティエリアを止めようと頑張っていたが、無情にも開いた扉の中を見詰め…。
二人が見たものは、一つのベットに仲良くはいり、抱き合って眠る刹那とロックオンの姿だった。



「まったく…嫌になるな」
「ティエリア…もう行こう」



















求める、それだけで動き始めるもの。