注)いろいろと無理があります。もうノリだけです。あんまつっこまないでください。





















「こちらはユニオン、アメリカ軍MS部隊MSWAD所属グラハム・エーカー大佐。ロックオン・ストラトスを嫁にした者だ」




グラハムのそんな問題発言から、俺はプトレマイオスに"結婚報告"に行くことになった。
帰れる…と言うことは大変喜ばしいことなのだが、如何せん帰る状況が悪すぎる。いや、悪いなんてモンじゃない!何でこの俺が、男と、しかも結婚報告に母艦に帰らにゃならんのだっ!!
言いたいことや叫びたいことは山ほどある、山ほどあるが…ちょっと、トラウマがあるので、何も言わないでおく…。









My Sweet Sweet Darling!
      〜 結婚報告は事後でおk 〜






「勝手に人の携帯使って、しかも何さらっと……つ、妻とか!巫山戯るなよあんた」

「しっ、電話中だ。静かにしたまえ」

「これが黙っていられるかっ」


自分の携帯で、しかも自分の直属の上司に、敵方の軍人が発する第一声が"妻にした"とか、普通に考えてもおかしい。もう既にそんなレベルじゃなくて…、気分的には家族に自分の性生活を暴露されてるような気分!!!一言で言うと、あえりえねぇええええええ!!!


『ロ、ロックオンの声も聞こえるという事は…、一応無事なようね』

「あぁ、その点では問題ない。何なら姿を写しても構わないが」


スメラギさん…"一応"ってなんですか…。
グラハムが至極まともな事を言っている当のは解る。人質?の姿を写してやると言うのは、安全確認のために必要なことだ。でもな…ソファに組み敷かれてる姿は、さすがに写されると困るんですけど?
この阿保なら本当に写しかねない、瞬時に嫌な汗がさーーっと背を伝う。


「ま、まさか写すとか…言わないよな?」

「さぁ…?」


爽やかな容姿に似合わない笑みが口元に浮かぶグラハム。顔がなまじ綺麗なだけに、そう言う表情を浮かべると迫力がある。言葉は「さぁ?」しか言われていないにも関わらず、その奥の多くの言葉を何よりも表しているように思える。実はこいつ…阿保なだけじゃ、ない?確かにMSに乗っている時のグラハムは、今の姿とは想像がつかないくらい(ここ重要)雄壮だ。はっきり言って、雄々しい。それにこの若さでフラッグを率いていると言うのは、かなりの実力があるのだろう。


『まぁ声だけで充分よ。それより…、私の聞き間違いでなかったら…さっき"妻"って言わなかったかしら?』

「ぶっ!!」


直球、直球過ぎるぜスメラギさん!!
さすがのスメラギさんも驚いたようで、受理の言葉を聞き返す。漏れ聞こえるだけでも、おっさんの声やティエリアの「なんということだ!」なんて声が聞こえる。アレルヤは絶句、刹那は無言ってところだろうか。うわぁ…マイスター、しっかりいるじゃねーかよ。ロックオン・ストラトス、今まさに情けなさで脱力…。


「そうだ、妻と言った。よって、事後で悪いが…そちらへ報告に行きたいのだが」

「は、はぁあああああああああ!?」


俺があまりに大きな声を出したせいか、グラハムは携帯に当てていない方の耳を自らの手で塞ぐ。
一体この男は何度俺を叫ばせれば気が済むのだろう。ひとっことも俺に相談もせずに、勝手に話を進めて、何が報告だ!しかも耳塞ぎながら話進めてやがる。


「報告って、この偽造結婚のか!?何勝手に話進めてるんだアンタ!プトレマイオスに帰れるのは嬉しいけど、こんな帰り方じゃその報告とやらをした後は、もう二度とかえれねーだろーが!」


ああああ、みんなの腫れ物に触るような視線が想像できるorz
ティエリア辺りには汚物扱いされるんじゃないかな…返せっ 今まで俺の築いてきた人間関係を…!!


「帰るなら俺一人で帰らせろよ!というか、俺を解放しろっ 」

「…少し静かにしてくれないか、話が出来ない」


駄々捏ねる子供をあやすようなそんな雰囲気。でも少しだけ苛立ちがその碧眼に滲んでいる。
またその余裕の感じが俺を苛立たせる。大体…大体この男が俺を拿捕さえしなければ、こんなことにはならなかったんだ。沸々と湧き上がる怒りがどうしても俺の言動をきつくさせる。


「五月蠅い!アンタがその電話を切ればいいはな……んむっ!?」


スメラギさんへ「失礼」と言い受話器を離したと思えば、顎を掴まれ、あとは意味がわからない。
あまりの事に思考回路がショートしたらしい。目の前に広がるのは金髪と長い睫毛。




「…んぅっ……ふっ……ぁ……んんんん!?」



口内に何か熱く湿ったものが入ってきたかと思えば、舌先からゆっくりと上顎をくすぐられ、最終的に舌裏まで到達した辺りでようやく、自分がグラハムに口付けられていることに気がついた。たが気付いたところで顎を掴まれていては全く動くことも出来ず、口内を我が物顔で蹂躙する舌を受け止めることしかできない。ものすごく、ものすごく不本意なんだけど…腰が…抜けそうだ…。


「……は、……っ」


長い口付けの後に離れたグラハムと俺の間には銀糸が。
どちらのものともつかない唾液で濡れた唇が熱を持ち、熱い。


「…黙る気になったかな?」


不本意にも潤んだ視界の中で笑ったグラハムは、俺を黙らせるには十分な男の色気があった。




























だぁああああああああああああああ!!!!
最悪だ、最悪だ、最悪だ!!
思い出すだけで死にそうになるっ この俺が、男にキスされて、き、きもち…あぁ、クソ!
しかもそんなところをあの眼鏡に見られて…!今のこの体勢、状況を忘れようと思って昔のことを思い出していたのに、なぜさっきのが思い出される!?俺は欲求不満か!?んな17、8の小僧じゃあるまいし…っ
自分の髪をぐしゃぐしゃにして叫びだしたい衝動に駆られるが、今はパイロットスーツにヘルメットを付けている状態なのでそれもできない。CB製のパイロットスーツは没収されてしまったため、ユニオン製を身につけたいるが、どうもしっくりこない。やはり自分の身体に合わせてつくられていたものとは差がありすぎる。


「どうかしたのか?」

「……な、何も。」


恥ずかしさのあまりバタバタと動いてしまった俺をグラハムが気遣う。(気遣ってるって言うのかこれは)首を右に少し動かしただけで見えるその顔は、やはり黙っていれば王子様。MS乗りらしく、やはりパイロットスーツに着られておらず、本来の姿がそこにある、という感じだ。
あの後スメラギさんと二人で話を進め、どうやら本当にプトレマイオスに挨拶に行くことになり…
嫌がる俺を半ば強引に引きずって宇宙へと登ってきたのだ。
今回デュナメスは一緒には帰れなかった、勿論ハロも。今頃俺の相棒二人は一体どんなことをされているのか…。切なさで釈然としない表情の俺に、もう一度グラハムが問う。


「…何か問題でもあるのか?」

「…問題、ね。ないと言いたいところだが…」


別にデュナメスと一緒に帰れなかったのが嫌なわけではない。や、すごく悔しいし残念だ、そのうち絶対に奪還すると誓ってはいるが…。何よりも問題なのは…


「シャトルだって何だって用意できただろーに、何でよりにもよってフラッグで行くんだよ!?」


そう、今の、この"状況"。


「私がフラッグファイターだからだ。この日のためにカタギリに特別チューンをしてもらった」

「特別チューンしてもらうなら、コックピットにもういっこ椅子付けろよっ、何で…何で俺がお前に姫抱きされるハメになるんだよっ」


シャトルで行けばいいものを、この阿保が「勿論フラッグで行く!」なんて抜かすから…。
しかもその理由がフラッグファイターだから。駄々捏ねんじゃねぇぞコラ!
大体コックピットなんて狭いだろ!デュナメスとか、ガンダムならまだしも…フラッグ狭いぞ!
操縦席に座ったグラハムの上に、ご丁寧に横抱き状態で乗せられた俺は、狭いコックピット内で体勢を変えることも出来ず、ただ大人しくグラハムの膝の上に収まっているしかないのだ。デュナメスは狙撃タイプ名為、スコープやらなんやらを登載するために他のガンダムよりも広くなっているのだが、それに慣れている自分にとってはフラッグは閉塞感がありすぎる。その狭さの中に成人男性を横にして入れて、はみ出した足が左右の壁に当たって曲がらない、なんて事があるはずもなく…。
しかもパイロットスーツ越しに男の膝があたるのとか、もう…もう…!
でもきっとその事を伝えたとしても、この男は「男の浪漫だ!」とか「照れているのか?」とか言うに違いない。ネジが一本どころか、思考回路からして壊れている。


「ありえない…」


大暴れしたいのは山々だが、この間の電話の時みたいな事になってはたまらない。
今の俺に出来ること=極力、大人しくすること。そうすれば尻に相手の膝を感じることもない、はず。
大体、挨拶に行くだけでフラッグを調整するような軍事組織ってどーなんだ。この調子なら「ハネムーンに行くぞ!」とか言って、フラッグで世界一周なんてことをしかねない。…絶対に嫌だ。でもやると言ったら、拒否権はない気がする。結婚だなんだかんだと、全て最初からグラハムに振り回されて…。あいつ俺の意見なんて一度も聞いたことないし。
俺を膝に乗せながらフラッグを操縦し、少年のように顔を輝かせているグラハムを盗み見る。何となく破天荒なキャラが、初めてあった頃のマイスター達を彷彿とさせる。だからってわけじゃないが…何となく、憎めない人だとは思う。


「…着艦許可が出た。行くぞ」

「ついたら降りるからな」



プトレマイオスからのゴーサインにグラハムの声が弾む。そんな姿が少々微笑ましくもあったのだが、それをかき消すように不機嫌そうな声を出しそっぽをむく。グラハムに頼み込んでカメラだけは切らせてもらったので、この恥ずかしい姿はマイスター初め、プトレマイオスのクルーに知られることは無い。けれども、自分が結婚報告に行くという事実は変わらないので、今から訪れるであろう羞恥の時を思い、俺は大きな溜息をつくのだった。


「アンタさ…、向こうで変な行動するなよ?絶対撃たれるから。」


仲間にも銃を向けたことのある仲間達が、笑顔で迎えてくれるはずがない。着いていきなり撃たれる…なんて事はないと思うが、一応忠告しておく。俺の言葉が意外だったのか、グラハムはフラッグを進めながら驚いたように目を見開き俺を見た。


「何だ、気に掛けてくれるのか?」

「ばっか、誰が。後々面倒だから忠告してやってるんだ。…おい、触るな」


柔らかな笑みを浮かべ腰を抱き寄せられる。ヒィイ!ただでさえ密着した状態なのに、これ以上何をしようってんだアンタ!ぐっと近くなった距離に思わずヘルメット越しであるにもかかわらず身を反らせた。何故かドギマギしている俺をよそにグラハムは少し考えるような仕草をした後、笑みを深める。


「ふむ…。だが、今も昔も舅というものは怖いものだ。覚悟は出来ている」

「や…そっちの心配じゃないんだけど…、な」

「安心しろ、君をいきなり未亡人になどしない」



いっそそっちの方が…や、目覚めが悪いから止めておこう。つーか、誰が舅だ。
よくもまぁポンポンとそんな台詞が出るものだと半ば呆れてものも言えない俺とグラハムを乗せ、フラッグはプトレマイオスに着艦するのだった。